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阿波人形浄瑠璃芝居  
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人形の種類
 
 人形浄瑠璃芝居の魅力のひとつに、頭(かしら)のすばらしさがあります。能面と違い、目・口・眉などが動くため、観客に強烈な印象を与えることができます。手足や衣装は、頭に合わせてつくられます。

 役柄や性格を明確に示す必要があるため、時に頭の表情は、どうしても大げさで極端なものになってきます。この点に注目して、人形の頭の種類を説明します。
 
「角目」=立役方(善玉)
 立役方(主人公)の目は「角目」と呼んで目尻がとがっている。上まぶたが一直線で、下まぶたを卵を半分に切った形にしている。眉の上下・横目・眠り目・口の開閉など、いろいろな動きをする。文楽でいう「文七頭」のことである。
 彩色では、強さを強調するとともに、物の道理をわきまえた聡明さを現したものは白く塗る。これは検非違使のなまった言葉で「剣別師」と呼ばれるものである。
 強さを強調する立役方は、丸目と同じく赤く塗ってあり、これも角目の頭という。代表例は、『一谷』の熊谷直実、『玉藻前』の金藤次などである。少し若造りで口の動く頭は「別師」といい、よく使われている。

(徳島県郷土文化会館民俗文化財編集委員会『民俗文化財集第13集 阿波の木偶』平成4年3月31日発行 p.207)
二代面光義作
阿波の十郎衛
天狗久作
若別師頭
 
「丸目頭」=敵役方(悪玉)
 敵役方の目は「丸目」と呼ぱれて目尻が丸くなっている。
 強さをあらわすには、時に顔を赤く塗り、いろいろな仕掛けをつくる。『近江源氏先陣館』の和田兵衛、『奥州安達原』の宗任などに使う。
 反対に身分のある敵役は、「時平」のように顔を白く塗り、灰色の勢と限取りをいれる。これを白悪または公卿悪という。

(徳島県郷土文化会館民俗文化財編集委員会『民俗文化財集第13集 阿波の木偶』平成4年3月31日発行p.206)
作者不明
和田兵衛
鳴洲作
宗任
 
「寄年(よりと)」=老人
 男の頭で、老人の場合は「寄年」。表情はやわらかで、少々滑稽味を感じさせるものもある。寄年の中には、役名を頭の名に付けていることもある。平作の頭、白太夫の頭、合邦の頭などである。

(徳島県郷土文化会館民俗文化財編集委員会『民俗文化財集第13集 阿波の木偶』平成4年3月31日発行 p.207)
 
大江順作
合邦(がっぽう)
『摂州合邦ヶ辻』の「合邦」
 人形頭の名前「合邦」は『摂州合邦ヶ辻』の登場人物の名に由来する。『摂州合邦ヶ辻』は菅専助・若竹笛躬合作、安永2年(1773)大阪で初演で後期人形浄瑠璃の代表的な作品。上下2巻の話だが、もっぱら下巻切りの「合邦庵室の段」が多く上演される。
 後妻の玉手御前は、世継ぎの俊徳丸に恋をし、許嫁に愛想を尽かせるために俊徳丸に毒薬を飲ませ醜い姿にする。それを知った玉手御前の父、合邦は怒って娘を刺してしまう。死ぬ間際に玉手は、すべては俊徳丸殺害の陰謀から彼を救うための計略であり、自分の生き血を飲めば俊徳丸も元の姿にもどることを明かす。全てはお家安泰のためだった、という筋書き。
 
「女形」=女の頭
 女の頭は女形と呼ぶ。中には目・口の動くものもあるが、本来女形は目が動くくらいで男の頭ほど、深刻な表情はとらない。
 「女形」にも年齢や役により、「小娘」、「娘」、中年女性の「老(ふけ)女形」、老年の「婆」、遊女の「傾城頭」などの区別がある。
 異例なものに、平常は美しい娘の顔でありながら、「山姥(やまんば)」とよぱれる恐ろしい頭がある。急に口が耳まで裂け、金色の歯が光り、目玉がひっくり返って金目となり、髪の中から二本角を出すという凄い頭である。文楽では「がぶ」という。これについては下記の「別頭」を参照のこと

(徳島県郷土文化会館民俗文化財編集委員会『民俗文化財集第13集 阿波の木偶』平成4年3月31日発行 p.p.207-208)
天狗弁作
夕霧(傾城頭)
人形富作
お染(娘頭)
 
「ちゃり」=端役の滑稽役
 「ちゃり」と呼ばれる端役の頭は、主に滑稽役として使われる。からくりが一つ仕掛けられている。
 からくりは、鼻剥けだったり、返り目(目をむいた表情)だったり、眉下がりだったりする。鼻むけは『仮名手本忠臣蔵』の鷺坂伴内、返り目は『生写朝顔話』の岩代多喜太、眉下がりは『恋娘昔八丈』の八丈等に使われる。
 端役の頭には鼻や首なども動かぬ雑なものがある。頭と首根は一本の木で造られた猪首式になっている。使い手も一人で「つめ頭」と呼ばれるものである。
ちゃり頭
どう変わるかな?
ちゃり頭
どう変わるかな?
 
別頭 = 一役だけの特別な頭
通常の頭とは違う仕掛けがなされた頭。特定の演題の特定の役だけに用いられるので一役頭ともいう。個性的な特殊な役なので、従来ある頭では流用できず特別に作られる。
 
天狗久作
景清
 瞼を開くと真っ赤な目玉が現れる。ちりめんを張り死相を表している。天狗久の考案である。
 この頭は、若竹笛躬・黒蔵主・中邑阿契編による明和元年(1764)に豊竹座で初演された人形浄瑠璃『嬢景清八嶋日記(むすめかげきよやしまにっき)』日向嶋の段のみで使用される。
 物語は、平家の残党、悪七兵衛景清と、その娘糸滝の間に交わされる親子の情愛を描く。自ら両眼をえぐって日向に追放になった景清だが、そこへ娘の糸滝がたずねてくる。景清は自らえぐった両眼を押し上げ、娘の顔を見たいと嘆く。まさにこの場面のために作られた頭なのだ。
 
天狗久作
般若丸
ここをクリックするとあららっ?
 平常は端正な顔でありながら、急に口が耳まで裂け金色の歯が光り(顎落ち)、目玉がひっくり返って金目となり(返り目)、髪の中から二本角を出す(角出し)という凄い頭。女形の頭にある「がぶ」同様の仕掛けである。
 使用される芸題は、『嫗山姥』(こもちやまんば:近松門左衛門、正徳2年<1712>作)山巡りの段でのみ使われる。
 
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